熊本で大きな地震がありました。心よりお見舞い申し上げます。
また、被災された建物などを目にしますと、建築に携わる人間として胸が痛む状況であります。
ただ、一部の報道で野次馬のように、被災された建物などを取り上げているのを見るに際し、放って置けない内容もありました。それは、渡り廊下が壊れたと報道されているものでした。空撮で映されたものは、どうみても「エキスパンションジョイント」が外れた状態のものに見えたからです。
当初の報道では、単に崩壊したインパクトのある映像を求めたのでしょうか? と疑問すら感じました。
そこで、エキスパンションジョイントにつきまして、少し書かせてもらいます。
地震など、建物が大きく揺れる際には、建物の作り方や形状によって揺れる方向や、揺れ具合が部分的に異なる場合があります。
平面的にL字型の形状をしている構造や、ふたつに別れた構造の建物を繋いでいる部分などは、お互いの異なる揺れ方によって部分的に力が集中しやすくなります。
そこで、L型の角や繋ぎ目部分などに、わざわざ隙間をもたせて建物が無理しすぎて壊れてしまわないよう「エキスパンションジョイント」という余裕のある部分を計画します。
これは、遊びの部分を設け、力を逃がすようなイメージで考えてください。
地震などで一部に集中した力が、他に影響を与える範囲を少なくするため、緩衝部分を持たせる。電車の連結部分のようなイメージとも言えます。
←電車の連結部分 ©kophotosku.com
これは、必要なものです。ここが外れても全体が壊れないようにするという、役割を持った場所なのです。
私共の仕事でも、構造が異なる居室を繋いだ室内に、あえて簡単なエキスパンションジョイントを設ける事がありました。
大きな地震が来ても、壊れなくて良い場所まで被害を出さない、些細な・・・しかし大切な計画だと考えております。